本日(11月7日)本会議で、討論を行いました。全文は以下のとおりです。
日本共産党区議団を代表して、報告第1号「2010年度東京都板橋区一般会計決算」、他4つの特別会計決算に反対し、討論を行います。
2010年は、リーマンショックの影響からの経済悪化が続いているもとで、2度目の派遣村を経験して始まりました。完全失業率も高止まり、景気の二番底が心配されていました。
そもそも、暮らしの困難は、「構造改革路線」、「新自由主義路線」のもとで広がったものです。労働者派遣法をはじめ、規制緩和や社会保障費削減で、格差と貧困を広げ続けてきたことで国民の生存権が脅かされたのです。民意は、09年総選挙の政権交代で明らかになったように、人間らしく生き、働くことだったはずです。そのことは、年度末に起きた東日本大震災と福島第一原発事故の中でも、さらに深く問われています。政権交代が起こるほどの要求に、区は応えてきたでしょうか。
まず、最終年度となる経営刷新計画が何をやってきたかということです。
第一に、福祉と医療、介護です。
急激な増加を続ける生活保護世帯や、11,252人となっている就学援助児童に見られる子どもの貧困に対して、締め付けるだけでは税金や保険料の徴収率は改善されず、むしろ新たな滞納者を生むだけです。働くことを希望した時に、いつでも利用できるだけの保育園や学童クラブの整備、お金の心配がなく介護や医療、教育を受けられる環境の充実こそが求められています。
国民健康保険では、32,868世帯もの滞納者が生まれています。高すぎる保険料を引き下げ、資格証の発行をやめるべきです。
後期高齢者医療制度の下でも保険料を払えない人が、前年度から二倍近くとなっています。医療費の給付が増えると高齢者の負担増になるという、制度自体の持つ根本的な矛盾を抱えている、高齢者差別の医療制度は直ちに廃止すべきです。
介護では、増大する要求に区は何も応えていません。2,204人にも及ぶ特養ホーム待機者増加にたいして、対策が全く進んでいません。認定がおりても、利用料が高く、持っているお金で受けられる介護を選択する事態です。区独自で利用料の負担軽減事業を行うべきです。制度の対象とならない介護について、検討すら行っていません。
さらに、区は多くの高齢者が利用している新高齢者元気リフレッシュ事業の見直しを検討していますが、むしろ利用率の低い家族介護支援こそ充実するべきです。
国が社会保障までも「自助・共助」を強調しようとしているときに、住民に寄り添う自治体までもが「公助」を投げ捨ててはなりません。
第二に、切り捨ててきた住民施策です。
働く意欲と能力があるものの、一般就労が困難な60歳以上の区民に技能習得と仕事の斡旋をする役割を持っている授産場を廃止決定したことは、就労支援を充実し強化する方向を否定するものです。まえの福祉作業所の老朽化を放置し、グループホーム設置など長年寄せられている障害者の様々な要望には目を向けない姿勢は改めるべきです。
住宅政策は、貧弱と言わざるをえません。公営住宅を求める住民の声には背を向けて、「公営住宅は一戸もつくらない」という方針を言い続けています。民間ストックというならば、民間住宅を借り上げてでも、低廉な家賃の住宅を供給する方針へ転換するべきです。
中小業者支援は、強化するどころか振興公社の公益法人化で区の事業からますます遠ざけられようとしています。区内事業所の廃業は3年間で3,820件におよんでいるように、中小企業では、単価が下がるばかりで従業員を増やすこともできず、気力も体力も失いかけています。
工場や商店が倒れてしまう前に、無担保無利子の融資制度や機械のリース費用や家賃などの固定費助成などで、歴史ある区内工業を継続していくための具体的な施策を行うべきです。
第三に、公務労働の民間開放です。
各所管からは、より充実した事業のためにと200人を超える増員要求があったにもかかわらず、要求を無視して人員削減ばかりを優先してきました。第一次経営刷新計画で440人、第二次刷新計画ではナンバーワン計画と合わせて397人を削減し、それ以前の行革で減らした区職員と合わせて2,024人もの職員を削減してきたのです。
「民間開放」を強調し、第二次刷新計画の4年間では、保育園の民営化、学童クラブ委託、保育園と学校の給食調理と用務委託化を大幅に拡大しました。さらに、10館の図書館、教育科学館、区営住宅管理、障害者福祉センターへと指定管理者制度を次々と導入し続けてきたことは、公務労働でありながら多くを非正規労働者に置き換え、不安定な雇用形態の運営により、むしろ区民サービスの低下を生んでいます。
指定管理者制度を導入した保育園では、1年間で6人が退職し10年以上の勤務者はたった1人という状況で運営しています。家庭のかわりに子どもたちの保育を担う区立園で、劣悪な労働環境のために保育士が次々と入れ替わる事態は、正常な保育を行うものとは言えず、保育園に指定管理者制度はなじまないものと言わざるをえません。指定管理者制度の労務条件細目ができたことで、9施設で賃金改定と人員増となったことは、一定の評価をするものですが、対象を正規労働者にとどめずに、非正規労働者の労働条件を把握し、必要な改善を行うべきです。
職員削減を続けることは、職員のやりがいや働きがいを奪うものにほかならず、続く不祥事の根本問題に向き合う姿勢こそ求められています。
第四に、庁舎南館改築です。
区長は、南館改築にしがみつき、強行してきました。区長の指示で改築計画が進められ、財政難を理由に緊急財政対策を位置づけ、多くの区民施策を削ると同時に改築計画を一時凍結しました。しかし、同時に凍結した産後一ヶ月検診や、認証保育所保護者負担軽減を縮小した事業などは「財政状況の予断を許さない」と凍結したまま、庁舎南館は改築を決断したのです。
また、改築にかかわる費用は、解体工事がはじまったにも関わらず、議会にも区民にも知らされていません。区長最大の事業でありながら、解体工事開始直後に発覚した追加のアスベスト撤去工事も結局、経営効率を優先してきた結果であり、区の計画性の欠如が現れています。
改築指示をした区長から謝罪の一言もありません。政治的判断が求められる課題で区長が発言しない姿勢は、度重なる不正を質す力もなく、区民からの信頼を裏切る行為であり、議会軽視にほかなりません。
このように経営刷新計画が行ってきたことは、経営効率ばかりを優先し、区職員削減を強固に進め、コスト削減を理由に公務労働を次から次へと民間に開放し、大量の官製ワーキングプアを生み出しました。暮らしや福祉の責任を区民におしつけて負担を増やし、住民施策を切り捨ててきたのです。「経営刷新計画」を引き継ぐ「経営革新計画」は、さらなる貧困と格差を生み出すものであり、大きな転換が求められています。
そして、災害対策の問題です。
災害対策で重要なのは、「予防」です。しかし、区の防災に係わる姿勢は「復興」に重点が置かれています。命や財産を失った跡に、強い町づくりを行うことよりも、家の倒壊や家具の転倒などを防ぐ対策に徹底して力を注ぐべきです。
とりわけ、高齢者や障害者で介護などが必要な人に対応する二次避難所整備の遅れは深刻です。ナンバーワン計画でも達成率は40%にと低く、整備済みの施設のうち、災害時の受入可能人数は、従来施設を利用している人数以外に、たったの105人です。特養ホーム待機者のうち要介護4・5の人たちは700人を超えています。重度障害を持っている人や透析患者は、大震災が来たら逃げられないし、逃げても生きていかれないと途方に暮れています。にもかかわらず、区は緊急財政対策で二次避難所整備費用を繰り延べたことは、「公助」で行うべき区の責務を投げ捨てる行為にほかなりません。
私たちは、昨年の決算でもマグニチュード7クラスの地震発生率70%の推定に対して、住宅の耐震化や危険な崖や擁壁、ブロック塀の改修などの抜本的な対策強化の必要性を指摘してきました。なぜ、災害対策の予防が進まないのでしょうか。それは、災害後の対応をする部署だけでは「予防」の役割を果たしきれないことも大きな要因です。まちづくりを担う都市計画でも重点課題として位置付けなければなりません。
災害対策は、財源難を理由に公的責任を先延ばしにしてはなりません。「自助・共助」は「公助」の責任の上にたって強化するものであって、本来「公助」でやるべきものまでもが自己責任となっては、救える命も救うことはできません。
また、原発事故後の対応についても重大な問題があります。
3月の事故発生直後に水道水が放射能汚染されたときに、他区では安全な乳幼児向け飲料水を個々の区民宅まで届けたのに対し、板橋区では区の施設まで取りに来なければ渡さないという対応をとりました。これは結果的に放射能汚染の一番ひどい時期に、多くの乳幼児とその親を外出させる結果となりました。
また、放射線測定が後手後手となり、事故後7か月も経ってから、学校の雨水タンクが汚染されていた事実がわかり、周辺の土壌を取り換える措置がとられました。それまでの間、子どもたちはその雨水で花壇に水やりをしていたのです。
こうした対応の遅れは「原発事故は想定外だったから」では済まされません。
いまだに放射線測定器などの資機材の配備や、学校給食などの食品の放射能検査体制などを求める区民の声に応えようとしていないのは、「板橋と原発・放射能は関係がない」という以前の認識が払しょくされていないからではありませんか?
福島原発事故の終息、廃炉にいたるまでには最低でも30年以上の時間がかかり、そのあいだに幾多の地震・津波が襲うのかを考えれば、放射能汚染に対する警戒は今後も持ち続けるべきであり、防災計画に「原発事故災害」をきちんと盛り込むべきです。
区政もまた、3・11東日本大震災が、つきつけたことにどう応えるのかということです。
被災地では、家も財産も仕事も失い、震災後、丸8ヶ月たってもなお、生活再建のめどが立っていません。これは、自己責任論にもとづく「新自由主義」「構造改革」路線をすすめてきた政治が、人間のつながりの弱体化と生活基盤の破壊でいざというときの対応力を脆くしてきたもとで被害を拡大したのです。脆弱な生活水準や環境は、板橋区民も例外ではありません。
犠牲になった多くの人たちと同じ時代に生きる私たちにとって、ひとつの命も置き去りにしない社会の構築を果たすことは歴史的使命です。生活基盤の崩壊となる行政運営の手法をキッパリと改め、区民の暮らしや仕事を守る方向へと大きく転換することを強く要望し、私の討論を終わります。